株式会社Y’zコーポレーション

適用の例(二)手段を読む

第二段です。三頁で置き換えた条件に照らして、手段が何を返せるかを調べます。

この頁で述べる手段の性能と限界は、道路に限りません。どの分野でも同じです。道路に固有なのは、活用マニュアル(案)が道路向けであることと、末尾に挙げる解析の例です。

手段は、ひとつではない

代表的なものを五つ、四つの軸で比べます。手段はこれで尽きません。軸も、何を決めたいかによって変わります。

手段 面として広く見る 過去にさかのぼる 目に見えない動きを測る 場所を選ばず成立する
地上に置く計測器
地形の判読
航空機・ドローン
衛星の光学画像
衛星干渉SAR
できる
条件による
この用途には向かない

崩落の範囲を知りたいならドローン、日々の動きなら地上の計測器、前回の対策が効いているかを過去にさかのぼるなら干渉SARです。同じ衛星でも、光学は起きたことを見せ、SARは起きる前の動きを測ります。

光学は雲と夜間、そして地形の陰に弱く、干渉SARは地形と植生に弱いという違いがあります。衛星による二つは、場所によって成立しないことがあります。

条件は、技術の側に書かれている

条件が書かれている場所 上段は、技術ごとに制約条件が書かれている形。どの区域で用いることができるかは示されない。下段は、区域ごとに、成立するかどうか、その理由、次に置く手段が書かれている形。 技術の側に書かれている 技術 制約条件 技術 制約条件 技術 制約条件 どの区域で用いることが できるかは、示されない 区域の側に書かれている 500mごとに区切った区域 区域ごとに、成立するか どうか、その理由、及び 次に置く手段を示す 条件付き可 不可

図は横にスクロールできます。

図三上段は、公表されている資料が示す形です。下段が、当社の示す形です。不可は、危険という意味ではなく、衛星では分からないという意味です。

二頁で述べた一段を、ここで具体に示します。

点検支援技術性能カタログは、技術ごとに制約条件を記載しています。合成開口レーダーの活用マニュアル(案)は、判読できない領域が出た場合には、ほかの手法による維持管理を考える必要があるとしています。

区域の側から見るには、その区域の地形と重ね合わせる必要があります。

公表されている三つの系統——道路の点検、測量、地盤沈下——は、この作業を業務の受注側に委ねています。

衛星干渉SARが返せるもの

どういう手法か

地表を格子に分け、格子ごとの平均的な動きをミリメートル単位で扱います。格子の大きさは、解析の設定によります。全国を対象とした国の成果は90メートル、個別の解析ではより細かい設定も可能です。

道路への使い方は、国の委託研究の成果として東京大学などが作成した「合成開口レーダーの活用マニュアル(案)」(令和3年)にまとめられています。同マニュアルは、衛星SARを、巡視や点検、危険度調査を支える技術と位置づけています。当社も、この位置づけを採ります。

点検要領は、変状を「形状、性状、環境の変化で、視認できるものをいう」と定義しています。干渉SARが捉えるのは、視認できる変状に至る前の動きです。

当社は、変状を見つけるとは申し上げません。変位を捉える、経過観察の材料をお渡しする、と申し上げます。

さかのぼれること

災害対応の期間と、そこで問われること 備えの期間、警戒の期間、発災、復旧、復興と続く長い期間。それぞれで決めることは変わるが、全期間を通じて「これまで、どうだったか」が問われ続ける。 発災 備えの期間 警戒 復旧 復興 どこを先に見るか 今年は行かない箇所 規制の運用 解除の判断 同じ素因の箇所を 洗い出す 対策は効いているか 監視を終えてよいか 全期間を通じて——「これまで、どうだったか」が問われる

図は横にスクロールできます。

図二段階ごとに決めることは変わりますが、全期間を通じて「これまで、どうだったか」が問われます。

備えから復興まで、災害への対応は長く続きます。段階ごとに決めることは違いますが、問われることは二つに絞られます。いま、どこがどうなっているのか。そして、これまでどうだったのか。

前者に答える手段は、いくつもあります。後者に答えられる手段は、多くありません。

蓄積されたデータを使うため、新たな撮影の発注を要しない場合が多く、ALOS-2とSentinel-1は2014年以降を扱えます。

同じ物差しで見られること

一度の観測が及ぶ範囲が広く、多数の区域を同じ方法で扱えます。

観測の間隔は、Sentinel-1で12日、ALOS-2で14日です。ただし同一条件での撮影は、3か月から4か月に一度となります。

衛星の諸元は、運用の変更により改まることがあります。

返せないもの

捉えられない動き

種類 内容 数値
前兆のない崩壊 動きが積み重なることなく起きる崩壊 活用マニュアル(案)が三か所で明記
速い動き 波長の半分を超えると追いきれない Lバンドで約12cm、Cバンドで約3cm

変位がなくても、確かめ続ける必要があります

活用マニュアル(案)に、尾道松江道の約70キロメートルを、2014年から2020年まで解析した結果が載っています。防災カルテの対象は94箇所でした。

変動区分 箇所数
A(活発に動いている)0
B(緩慢に動いている)0
C(継続観測が必要)65
D(その他)29

多くの箇所で、変位は認められませんでした。これまでの点検と対策が働いてきたことの表れでもあります。

ただし、動かないことの証明でもありません。理由は二つあります。

一つは、現象の側の理由です。地滑りは、常に動き続けるとは限りません。動いて、止まって、また動くことがあります。観測した期間が、たまたま止まっていた期間に当たることもあります。

もう一つは、解析の側の理由です。広域の解析では、電離層や大気の影響によるノイズを完全には除けません。活用マニュアル(案)は、誤検出が必ず生じること、「変動なし」とされた箇所もノイズに隠れている可能性があることを明記しています。

有意な変位が検出されないことは、健全であることを意味しません。一度の判定で終わりにはできません。

観測が成立する区域と、しない区域

観測が成立しない四つの理由と、その判定に要するもの 幾何学的不可視域は地形の陰で電波が届かない範囲、視線方向に対する感度は斜面の向きにより動きが表れにくい場合で、いずれも数値標高モデルと軌道情報から解析の前に定まる。散乱安定性は草木で電波の返り方が変わる場合、測定点密度は動きを測れる点の多寡で、いずれも蓄積されたデータから推定する。 観測の幾何に由来する 数値標高モデル 軌道情報 ① 幾何学的不可視域 地形の陰になり、電波が届かない ② 視線方向に対する感度 斜面の向きにより動きが表れにくい 解析の前に定まる SARデータを用いない 観測の蓄積により判定する 蓄積された SARデータ ③ 散乱安定性 草木で電波の返り方が変わる ④ 測定点密度 動きを測れる点が足りない 蓄積された観測から推定する 新たな撮像を要しない

図は横にスクロールできます。

図四観測が成立しない四つの理由と、その判定に必要なもの。前の二つは、数値標高モデルと軌道情報だけで定まります。後の二つは、蓄積されたデータを用います。

有効な解析結果を得られることを、ここでは観測が成立すると呼びます。成立しない理由は、四つに分けられます。幾何学的不可視域、視線方向に対する感度、散乱安定性、測定点密度です。

前の二つは、数値標高モデルと軌道情報だけで定まります。SARデータも、実測による較正もいりません。手法によりません。

後の二つは、蓄積されたデータから推定します。こちらは、解析の手法によって変わりえます。それぞれの内容は、図に記しています。

判定には、二回の観測の電波がどれだけそろっているかを示す指標を使います。コヒーレンスといい、0.3以上でなければ有効な解析結果は得られません。草木のある山地では、0.3以上になる割合が、Cバンドで約30パーセント、Lバンドで約80パーセントです。

成立しない区域に、何を置くか

手段は三つの群に分かれます。費用と待ち時間の性格が、群ごとに違います。

内容 費用 待ち時間
選ぶ 軌道、帯域、観測時期、解析手法を選び直す(例) 解析の増分のみ。現地に何も置かない 蓄積されたデータがあれば、なし。過去にさかのぼって解き直せる
置く 現地に反射体や計器を置く(例) 設置費と、年ごとの維持費。主因が機器ではなく、通信と電源の工事になることがある 置いた日より前には遡れない。意味のある速度が出るまで半年から一年以上
換える 衛星の外の手段へ移す、または補う 既存の費目と人日 既往の成果があれば即時

まず「選ぶ」を尽くします。現地に何も置かず、過去に遡れるからです。それでも成立しないときに、「置く」を検討します。

すでに三群を尽くしておられる場合もあります。反射体を設置済み、傾斜計も導入済み、地形の点群も持っておられる。その場合に当社が返せるのは、どの区域が、どの理由で成立しないのかを分けることです。ですから、最初にうかがいます。これまでに何を試されましたか、と。

区域ごとの成立と不成立が定まれば、第三段です。